「教養を身につけたい」という人は多いです。
書店の自己啓発書コーナーやビジネス書コーナーに行けば、
「教養を磨くための本」「ビジネスマンのための教養」などのタイトルの本をいとも簡単に何冊も見つけることができます。
それだけ「教養を磨き頭の良い人になりたい」という上昇意識の高い人が多いのでしょう。
私が思う、教養を磨くために必要な唯一のことは「プライドを捨てること」です。
いつまで経っても知的に成長できない人の特徴はプライドが高いことです。
例えば、書店に行けば難解とされている名著の「超訳版」や「マンガ版」や「猿でも分かる名作」のような解説書が置いてありますが、
プライドの高い人はそういった簡単なダイジェスト版のようなものを「軽視」します。
ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」は時代背景や19世紀ロシア独特の文化、言い回し、登場人物の複雑さなども含めて初見では非常に難解として知られており、
書店ではマンガ版も売られていますがプライドの高い人は
「ドストエフスキーを漫画で読むなんて格好悪い」と考えていたりします。
そういった人に「じゃあ原作でカラマーゾフ読んだことあるの?」と聞いてみると
「いやそれはないけど…」と歯切れ悪く返ってくるのです。
この世には、「プライドゆえに初歩を軽視しいつまでも現状維持のまま死んでいく人」と、
「まずは初歩からゆっくりと教養を深め成長していく人」の2種類しかいません。
ドストエフスキーでも、トルストイでも、ヘーゲルでも、マルクスでも、
世界的に著名な作品や哲学書は「超訳版」「簡易版」「漫画版」が出版されていますし、
近年ではYouTubeなどで動画コンテンツも充実しています。
「カラマーゾフの兄弟」なら、まずはYouTubeや漫画版で時代背景や近代ロシアの文化的特徴やあらすじを抑えておき、
基礎知識を充実させた後に原作の翻訳書に取りかかるというのも立派な読み方のひとつです。
このような「初歩からの経路」で世界的な名作を読み倒し、教養を深めていけるなら
「漫画なんて…」というプライドがいかにくだらないものかが分かります。
名作の漫画版もYouTubeも今の時代ならではの素晴らしいコンテンツです。
ひと世代前の人の中には「ドストエフスキーを理解してみたいけど解説書もなくてチンプンカンプンだ」
と挫折してしまった人もきっと多かったことでしょう。
私たちには名作を理解し、読破し、教養を深めるための環境が整えられています。
これを使わない手はありません。
プライドを捨てて初歩から学ぶ。
これこそが、教養を身につけるための、遠回りのようでいながら1番の近道なのです。