前編はこちら
【③公式戦最多連勝記録達成】
14歳、史上最速でプロ入りを果たした後、
藤井竜王の記念すべき初対局は「ひふみん」こと加藤一二三九段が相手でした。
この一戦に勝利したのを皮切りに、なんと公式戦29連勝(最多連勝)という記録を達成してしまいます。
この記録達成時も当時は相当なニュースになり、「藤井四段(当時)はどんな昼食を食べているのか」「藤井四段の今日のおやつはなんだったのか」など、
藤井竜王の対局中の食事までメディアに取り上げられ注目が集まり、藤井フィーバーという現象が巻き起こります。
今では「将棋メシ」といってプロ棋士の休憩時の食事に注目する将棋の楽しみ方も一般的になりつつありますが、
思えばこの「将棋メシ」文化は藤井フィーバーの最中に生まれたのかもしれません。
もしくは「将棋メシ」黎明期に藤井四段(当時)が爆誕したことによって、より「将棋メシ」を楽しむファンの方が増えたのかもしれません。
話が逸れましたが「公式戦29連勝」を、彗星の如く現れた新人が達成してしまったことは将棋界に文字通り「衝撃」を与えました。
「いや、でも新四段の対局なわけでしょ?つまり相手も弱いわけでしょ?だったら連勝するくらいおかしくないんじゃない?」という声も聞こえてきそうです。
もちろん、当時もそのようなことはしきりに囁かれていました。
ですが、当記事の前編を思い出してください。
プロ養成機関「奨励会」の最下層のクラス(6級)の人ですら、アマチュアトップレベル(アマ五段)程度の実力があるのです。
奨励会に「入会」できる時点で将棋の天才だと言っても過言ではありません。
また、奨励会は年齢制限があり、26歳までに四段(プロ棋士)になれなければ強制退会となってしまいます。
言うまでもなく、奨励会員は下は6級、上は三段(くどいようですがアマチュア三段ではなく、奨励会三段です)まで天才の中の天才の集まりです。
その、天才ひしめく環境の中で勝ち上がり続け、
最終的にプロ棋士になれるのはほんのひと握りにすぎません。
つまり、プロ棋士とは将棋の天才の中の天才の中の天才、正真正銘の鬼人の集まりなのです。
普通は、プロ対局では6割勝てれば「相当すごい棋士」とみなされます。
7割勝てればプロ棋士の最高峰「タイトル戦」に出場しタイトルを獲得してもおかしくありません。
説明してきたように、プロ棋士に「将棋が弱い人」など決していないのです。いるわけがありません。
そんな中で「29連勝をする」ということがいかに半端ではないことがお分かりいただけるでしょうか。
そんな大快挙をやってのけたのが藤井竜王の新人時代(繰り返しますが当時は14歳)なのです。
【④竜王獲得までの数々の偉業】
その後も、藤井竜王は周囲の期待通り、否、周囲の期待以上の快進撃を続けていきます。
その中の一部をあげるのであれば、
最年少一般棋戦優勝
最年少タイトル獲得
史上初の10代九段
史上初の10代二冠
史上初の10代三冠
史上初の10代四冠
などです。
「タイトル」については少し前項で述べましたが、将棋界には「名人」「竜王」などの8つのタイトルがあり、タイトルに挑戦〜タイトル獲得者となるのは全棋士の目標と言っても過言ではないです。
タイトル保持者は正真正銘の「最も将棋が強い人間のひとり」と言っても良いでしょう。
タイトルを複数持っている人は「二冠」「三冠」「四冠」などの称号がつきます。
しかしお察しのとおり、普通は何個も何個もタイトルを獲得することはできません。
多くの場合プロのトップ戦線は実力が拮抗していますし、
単純な将棋の強さだけでなくコンディション等によっても勝敗は左右されるからです。
(トップレベルであればトーナメント勝ち上がりなどにより単純な対局数も増える上にメディア出演や著書執筆などの対局以外の依頼も多く、過密日程となり、当然ながら将棋の研究の時間も体力的な余裕も無くなっていきます。トップに立てば立つほどコンディションの調整は難しくなるでしょう。)
しかし、藤井竜王はそんな中でも去年〜今年にかけて二冠、三冠と保持タイトル数を積み上げ、
つい先日あらたに竜王を獲得し四冠王となりました。
もはやアマ三段ごときの私が解説しきれない領域ではありますが、
本当にものすごく強い。大天才だということは確実です。
今後も藤井竜王の活躍には目が離せません。
なんといってもまだ19歳。
一般論を言えばこれからますます対局を重ね、ますます強くなっていくでしょう。
もしかしたら史上初の八冠全冠獲得の大偉業も達成してくれるかもしれませんね。
(唯一、羽生善治先生が全冠獲得の大経歴を持っていますが当時はタイトル数がひとつ少なく、八冠ではなく七冠でした。)
ひとりの将棋愛好家として、藤井聡太という大スターの登場により、
これからますます世間の将棋熱が高まり、将棋ファンが増えていくであろうことを嬉しく思います。
藤井新竜王、改めて竜王獲得おめでとうございます。